完全犯罪
おじろく、おばさ の話はご存知でしょうか。
正直、読まなきゃよかったという類の話なので、クリックの際はご覚悟のほどを。
http://homepage3.nifty.com/kazano/ojiroku.html
中世日本のひどい話がまたか、と思ったが、読み返してみるとかなりいろいろ不審点が出てくる。それはこの人の要約技術の問題かもしれないが、たとえば
>次男以下と女の子は、他家に養子になったり嫁いだりしないかぎり結婚を許されず
女の子は、嫁がない限り結婚を許されない? 結婚が許されないのであれば、嫁ぐことはできないではないか。
>普通に訊いても顔をそむけて答えてくれないので、睡眠薬を使ったアミタール面接を行ったのだそうだ
精神科のフィールドワークって、薬まで使えるの? 調べてみたら、アミタール面接というのは、精神疾患のある人に対して原因究明&治療のために用いるもので、麻酔薬を静脈注射するそうだ。精神疾患を治療して欲しいというわけでもない人に、そんなこと行えるのか?
>おじろくが村を出ることは非常に悪いことで家の掟にそむくことだ、という考えがあったため
非常に悪いこと、というわりに、その理由の説明はなく、なぜか「家の掟」という別の話が出てくる。どうも説得力がない。
>戸籍簿には「厄介」と記され
いかに山間僻地とはいえ、公文書にこんな表記があるものなのか。
そのほか、全体に妙に刺激的というか、「そんなひどい…」感を煽るというか、「いやいや、あなたのその常識が通用しないんですよ」という調子というか、そういうのが見えて、正直いかにもこれは「作文」であると感じられてならない。
この話は、精神医学 という本(学会誌?)に掲載されたそうだが、おじろく/おばさに言及したものはどうもこれだけらしい。
山間僻地の特異な風習だから、ということなのだろうか。しかも、昭和32年時点ですでに3人しかいなかったとあり、現在ではもう完全に過去の話。検証も不能に近い。
三角寛という人が、古代より日本の山奥で暮らす人々「サンカ」および彼らの秘密の文字「サンカ文字」についての論文を書いたけれども、どうもかな りの部分はでっちあげらしい、というのが最近では通説になっている。おじろく、も、その種の話のような気がしてならないのだが、一度権威ある(?)本に 乗ってしまうと、事実として継承されてしまう。もし私のカンどおりのでっちあげだとしたら、これっていわば、妄想を事実として固定する「学術的完全犯罪」 なのではないか。
みなさんは、どう思いますか?