グーグルがモトローラのモバイル部門を買収。パテント目的だとか、いろいろ解説があるが、まず最初に誰もが懸念するのは、これまで「パートナー」だった携帯電話機メーカーと、今後は競合することになるんじゃないかということだろう。
特に、アップルの時価総額がエクソンを抜いて全米一になったこととからめる報道は、いかにも、googleも携帯電話売って時価総額でアップル抜きたいに違いない、という筆者の憶測が行間からにじみ出ている。
実際、グーグルの収益のほとんどはずっと検索広告であり、次の柱を求めたとしても、おかしくはないような気もする。
ではグーグルは今後、手のひらを返したように、自社携帯をがんがん売ることに注力し、アンドロイドのパートナーには冷たく当たるようになるのだろうか?
ここでひとつ参考になると思うのが、インテルの例だ。
インテルはチップセットメーカーを閉め出した
ご存じのとおりインテルはCPUメーカーとして有名だが、インテルCPUを使うための「チップセット」も、事実上独占している。昔はサードパーティのチップセットメーカーもたくさんあったのだが、Pentium 4が出たころから、ライセンスを厳しく問うようになり、事実上ほとんどのメーカーがインテルCPU用チップセットのビジネスから退場している。
これを下敷きにすると、グーグルは、モトローラ以外の携帯に対して締め付けなり情報統制なりを行い、事実上閉め出すという戦略を取る、かもしれない。
ただ、インテルがチップセットメーカーを閉め出したのは、チップセットというのがパソコンの機能を決めていく上できわめて重要なパーツであり、そこで他社に主導権を取られてしまうと、自分は単なるCPUというパーツを提供するだけの存在になってしまう、という危惧があったと思う。
ひるがえって、グーグルが、他の携帯メーカーを、たぶん非難囂々となってでも閉め出さなければならないほどの理由があるだろうか。
パソコンにおけるCPUは、性能を左右はするものの、パソコン全体を規定するものではないが、スマートフォンにおけるAndroid OSは、そのスマートフォンの機能や使い勝手をかなり大きく規定する。つまり、Androidを押さえていれば、Androidスマートフォンの進化の主導権は握っておける。
主導権を握った状態であれば、他社にアイデアを出してもらうことは、むしろさまざまな可能性の追求につながり、プラットフォーム全体の魅力とシェアアップにつながる。
しかしマザーボードメーカーは閉め出さなかった
インテルの例でいえば、チップセットではなく、「マザーボード」のビジネスが、今回のグーグルにおけるモトローラ端末のビジネスが、アナロジーとしては適当だと考えられる。
インテルは、チップセットのみならず、パソコンの事実上の骨組みともいえる、マザーボードも自社で製造している。だが、同社は、他のマザーボードメーカーを閉め出そうとはせず、むしろ積極的に情報を公開している。このサイト http://www.atomicmpc.com.au/News/148502,intelfoxconn-alliance-could-cripple-asus.aspx によれば、インテルのマザーボードの製造数は年600万枚、これに対して、トップメーカーのAsusやGigabbyteは1900万枚ほどだという。
積極的にシェアを取りに行く気がないのなら、なぜわざわざパートナーと競合する製品を作るのか? 上のサイトによるとそれは、価格のコントロール権を持つためだという。
すなわち、インテル純正という、マザーボードピラミッドの最上位の製品は、当然最高の価格をつけられる。他社製品は、これより低い値段になる。競合(AMD製CPUを搭載できるマザーボード)が発生した際、自社マザーの価格を引き下げれば、必然的に他のメーカーのマザーボードの価格も下げざるを得なくなり、全体の価格をコントロールできるというわけだ。
この解説が正しいかどうかはわからないが、今回の買収で、グーグルはAndroid携帯市場における価格決定権を多少は手にすることはできるだろう。
「現場のリアリティ」がほしかった?
私はもうひとつ、インテルは、パソコンという最終製品を、実際に作り込むことによって得られる知見を重視しているような気もしてならない。CPUとチップセットを作って、はいあとはみなさん作ってください、では、製品を作っていく上で発生するさまざまなトラブルや改善の芽を、自身がチェックする機会を失ってしまうからだ。
グーグルはこれまで、HTCやサムスンなどに、新OS搭載機のリファレンスモデルの製造を委託してきたが、いかにパートナーとはいえ、自社ではない。端末メーカーを配下に納めれば、情報漏洩等を気にせず、フットワークよく、新しいアイデアを物に落とし込んでいける--このスピード感がないと、垂直統合のアップルと対抗するのに遅れを取る、と考えたとしてもおかしくないようにも思う。
結論としては、端末市場へのグーグルの影響力は高まるものの、それによって他社が脅かされることはそれほどないと、私は考えている。
ただそれはあくまで、グーグルに検索広告という強力な収益源がある限りである。もしそれがなくて、端末を販売することが同社にとって死活問題になるような状況になると、話は変わってくるだろう。その昔、一度は互換機の製造を認めながら、あるときから順次廃止し、自社だけがとあるパソコンを完全にコントロールできる状態にし、アイデアと経営資源を集中することで復活の道筋をつけた企業の例もある。
8月 16th, 2011 | Category: テクノロジー | Leave a comment