フランス語とのファーストコンタクト
フランス語を最初に意識したのはいつ、どんなきっかけでしたか?
中学生の時、友人の悪ガキどもの間で「ジョドボ」というのが流行った。「ジョドボジョジョドボジョドボボ、さあどっちだ?」 答えは「ヤマノウエ」か「イギン」の2択。
東京IGINのテレビCMをご存じの方ならそろそろ見当がついていると思うが、このジョドボというのは、田舎の中学生が必死に(?)フランス語を真似ようとして編み出した擬音だったのである。
ぼくはあまりテレビを見ないほうで、実はイギンもヤマノウエ(これは未だになんなのか不明だ。お茶の水の山の上ホテルのCMを、九州で流すとは思えないが、では何だったのだろう?)も目にしたことがなかったので、同級生がいうジョドボが最初は何なのかわからず、尋ねて、答えがあったのかどうか。奴らはこれがフランス語であることは知っていたのだろうか? 今となっては記憶は定かではないが、たぶんこれが、フランス語との最初の接触だったと思う。ただ、直接耳で聞かなかったせいか、それでフランス語に興味を持つことにはならなかった。
興味を持った最初のきっかけは、チョコレートの中に入っていたカードだった。チョコレートが大好きで、スーパーで売っているチョコは順番に「制覇」していたのだが、なにかのチョコに、イラスト入りのカードが入っていて、そこにフランス語と、その意味と、読み方が書いてあったのだ。日本語訳は今でも覚えている。「ねえキミ、僕の心はこんなに傷ついているんだ」。
なぜこれが強烈な印象だったかというと、ぬいぐるみのハートに針がたくさん刺さっている、やや痛々しいイラストもともかく、そこに書かれていた原文のスペルと、カタカナで書かれたその発音が、あまりにもかけ離れていたからだ。アルファベットと、英語の発音パターンは多少知っているが、その知識では想像もできないような音が、そこに記されていた。英語の読み方は、本当に英語でしか通用しないんだ、その他の国の言葉は、これほど似ても似つかぬものなんだ、と、なんだか打ちのめされたような気分になった。
では、実際に何と書かれていたのだろう。残念ながらそれを覚えていない。冒頭は確か、マシェリだった。日本語から訳すと、Ma cherie, mon coeur est blesse’ comme ca、とかになるんだと思うが、これに「マシェリ モン クー レ ブレッセ コム サ」と振ってあっても、そんなにびっくりはしないだろう。最後はblesseではなく、かすかな記憶では、フュイエ みたいな、動詞の過去分詞だったような気がしている。…uffeye みたいな不思議なスペルと発音が違和感をあおっただけだったのか。
父の書棚にフランス語入門の本を見つけて、なぜかはまって読みふけるようになったのは、このときのインパクトが大きかったからだと思う。
……いや、別に今、ぺらぺらしゃべれるとか、すらすら読めるというわけではないのですが。