史上最高の円高?
円実効レート、史上最高に
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090106AT2C0600506012009.html
実効レートというのは、諸外国通貨に対して日本円がどれくらい強いか、弱いかを示す指標なので、昨今の円高を反映してレートが上がるのは当然だが、1995年の超円高(ドル円78円台)を超える水準だというのはいくらなんでも実感に反する。ヨーロッパのワインの価格だって、1990年代後半の円が強かった時代と比べ、もっと安いという気はしない。本当かな? と思って日銀のサイトを見る。
http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/exrate.htm
なるほど、「名目実効レート」(図1:最初のグラフ)は史上最高のようだ。でも、この20年ほど、諸外国では物価がずっと上昇しているが、日本では物価は下がり、賃金も増えていない。ドル90円、ユーロ120円という数値自体(名目)は、確かに円高と言えるが、昔なら1ドルで乗れた地下鉄が2ドルになっているのだとしたら、実際に払わなくてはならない日本円は180円なわけで、1ドル130円だったころに1ドルで乗れたとするなら、名目では円高でも、円がいくら必要かという意味では、むしろ額が増えている、つまり円安になっているのと同じことだ。要するに、「実際の使いで」で見る円の価値は、決して高くなってはいない、どころか、むしろ、先方の物価高に負けて、むしろ低くなっているようにも感じられる。
物価上昇率の違いを加味したのが、上のサイトの2つ目のグラフ、「実質実効レート」のほうだ。こちらも直近で急上昇はしているものの、まだようやく80年代後半から2002年頃までの円高時代の下限にようやく達したか、というところだ。
というか、普通実効レートを参照するときって、この「実質実効レート」を使うのが当たり前じゃなかったか。
海外旅行や個人輸入といった、実際に外貨を使うケースを考えた場合、常に「それで何が買えるか」という点がついてまわる。体感上の円の価値、体感上の円高・円安は、それにリンクしている。なのに、物価上昇率の違いを無視した名目実効レートの値を出して、わざわざ歴史的な円高、とあおる日経の真意はどこにあるのだろう。輸出企業が困るから、そろそろ介入すべきだ、とでも言うための伏線のようにも感じられる。企業サイドから見ればそうかもしれないが、消費者には円高のメリットもとても大きいのだけれど、そのへんはスルーするのでは企業寄りと思われても仕方があるまい。