空港考(1)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009112301000285.html
国土交通省が、11kmの新線建設で羽田=成田間59分を実現する構想
2chでは「1時間もかかるんじゃ意味ねぇ!」という罵詈雑言が多いのですが、
実はこの記事、巧妙にポイントを隠匿しています。国交省なのか前原なのか、
よく考えてるなぁと思いました。
まずこの見出し、担当記者がわかってないだけなのか。
ポイントは羽田成田59分ではなく、「東京成田37分」「東京羽田22分」です。
つまり、「東京から空港に行くのが楽になる」
なぜ東京なのか。その前に背後の前提条件をクリアにしましょう。
まずは、羽田。第4滑走路ができれば、なんだかんだでかなりの数の国際便が羽田から飛ぶようになります。航空会社(JAL/ANA)としては、貴重な新枠でドル箱路線を飛ばしたいだろうから、おそらく、ソウルとかホノルルとか、ニューヨークとかロンドンとかといった、メジャーな路線から順に装備されるでしょう。
「成田=羽田のアクセスが悪い」のがなぜ問題になるかというと、要するに、地方から羽田に来て、それから国際線に乗るのに成田に行かなければならない、という状況があるからですが、そもそも羽田から国際便が飛ぶなら、成田=羽田のアクセスは必要なくなります。羽田に来て、そのまま飛べばいいからです。
つまり、羽田国際便強化で、地方への対応問題はかなり片付く。
しかしここで問題になってくるのが、新幹線です。
東京を中心に新幹線網が充実しているので、東京に行くには新幹線しかない、とか、飛行機もあるけど便が少なくて不便、というところがいっぱいあります。しかも今後、北陸新幹線や東北新幹線の延伸やスピードアップで、新幹線依存の地域はますます増えるでしょう。
その状況で、東京に出たはいいが空港(羽田、成田)に行くのが面倒、ということになると、「じゃあ地元の空港からソウル経由で出ちゃおう」ということになる。
今、成田へは、一応成田エクスプレスがあるが、50分強かかる。羽田はもっと悲惨で、山手線かなにかに乗って浜松町か品川で乗り換える必要がある。海外旅行の大きな荷物を持って山手線には乗りたくない。
しかし、この新線ができれば、羽田には乗り換えなし1本22分でいける。成田の場合でも今よりずっと短い37分ですむ。つまり、新幹線で東京に来る人が、ぐっと空港に出やすくなる。ライバルであるソウル経由に対して、今よりもずいぶん有利になります。
もちろんいうまでもなく、首都圏在住者にとっても、羽田、成田への所要時間が減るのは万々歳。
ここまでのメリットで、十分上記の新線を作る意味はあるように思います。
で、あくまで「ついでに」羽田成田も59分に短縮される、のです。
さて、これに乗るにはどういう人か。
メジャーな海外目的地へは、羽田からの便が飛びますが、ややマイナーな目的地へは、今後も成田からの便になります。
しかし、成田も滑走路が延伸したことなどもあり、発着回数30万回化が見えています。一部の国際便が羽田に回れば、ますます発着枠に余裕ができます。そうなると、成田は純粋な国際空港ではなく、同時に「千葉空港」としての役割を果たすようになります。成田は千葉の都市圏を抱えてそれなりの人口がいますから、日本の主要都市に対しては、国内便をそれなりに設定可能でしょう。福岡とか、札幌とか。そうすると、そういう主要都市からは、今までにように(成田便がないから)羽田経由ではなく、成田に直接飛べるようになるでしょう。
となると、羽田=成田間を乗る必要がある場合とは、
「成田への直通便がないような、中規模以下の地方都市の人」が「羽田からは便がないような、メジャーでない目的地に行く場合」が中心になります。つまり、移動すべき人は今よりかなり減るのです。
そういう方々にとっては、依然59分という移動時間が発生しますから、これをもってただちに「ソウル乗り換えの代わりになる」とはいえないでしょう。現在の107分よりはましとはいえ、今後もソウル経由を使う人は少なくないでしょう。しかし、そういう人たちまで取り込めるような、「羽田成田一体化」を行うには、それこそリニアでも作るか、さもなくば、成田はあきらめて羽田に滑走路を6-7本作るということになりますが、これはたいへんなことです。
首都圏住民にとっても空港アクセスが向上し、多くの地方の方にとっても空港アクセスが向上する–たいへんすばらしい案であると、私は思います。
ただこれ、JR東日本にとっては頭が痛いでしょうねぇ。
N’EX乗る人いなくなりそうだし、モノレール利用客も減るでしょう。
なるほど、「じゃあJR東さん、出資してください!」ということか。やるなぁ前原。